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レーズンと口腔衛生

これまで長い間、レーズンは、糖分の含有量が高いことや歯に付着する粘り気があることから、虫歯を促進させるものと考えられてきました。しかし、近年の研究により、レーズンは虫歯の発生に関与することはなく、さらに虫歯に対してある程度の予防効果を有する可能性があることが分かってきました。


研究名:
「レーズンと口腔衛生」 Raisins and Oral Health

研究者:
Allen Wong、Lynne M. Wong、Douglas A. Young、Mark T.
Booth (University of the Pacific Arthur A. Dugoni School of Dentistry)
Dimitris E. Emmanouil (University of Athens Dental School)
Ashley R. Waters (Eastern Illinois University)

出典:
アメリカの食品科学専門誌 「Journal of Food Science Vol. 78 Supp. 1」(2013年6月)


代表的な3つの虫歯の原因とレーズンの関係を検証

1.口腔内における酸の産出

虫歯の原因は大きく分けて3つありますが、そのうちの1つは、口腔環境が酸性になることです。
ショ糖などの発酵性糖質を摂取すると口腔内の微生物の働きにより酸に変換され、その酸が拡散して口腔内pHが臨界閾値(約5.5)未満に低下すると、歯の表面に空洞や穴ができ虫歯になります。口腔内における酸の産生にレーズンが与える影響を調べた研究(調査1)によると、レーズンは、4種類の被験食物の中で糖の含有量が最も高いものの、摂取後も口腔内pHを低下させませんでした。
これはレーズンの糖分が、酸を産生させやすいショ糖ではなく、ブドウ糖と果糖であるためと考えられています。また、レーズンは最も酸を産生させやすいブランフレークを口内から除去する働きを有することも認められました。

方法 7~11歳の小児20名に、4種類の食物(レーズン、ブランフレーク、市販のレーズンブランシリアル、無糖の実験用レーズンブランシリアル)を摂取させ、口腔内における酸の生成に与える影響を調査した。
結果 レーズンの糖含有量は被験食物の中で最も高い68%だが、酸の産生作用は最も低く、レーズンやレーズンブランシリアルの摂取後、口腔内のpHが6.0未満に低下することはなかった

2.歯の表面への食物の付着

虫歯の原因の2つ目は、歯の表面への食物の付着です。レーズンは粘り気を有するため歯に付着しやすく虫歯を促進すると考えられてきました。しかし、調査2の結果より、食物の粘り気と歯への付着度合いには、ほとんど相関関係がないことが分かりました。また他の調査では、レーズンは口腔内に滞留する量が比較的少なく、むしろ酸を産生しやすい食物を歯の表面から除去するのに役立つことが明らかになりました。

方法 18歳以上の315名の消費者を対象に、レーズンを含む21種類の市販食物について 粘り気を1~9の尺度で評価させた。また5名の被験者に対し、21種類すべての食物を無作為に摂取させ、嚥下から1分、2分、5分後の滞留量を測定した。
結果 食物の粘り気の評価と、食物残渣の歯への付着の程度には、相関関係がないことが認め られた。また、レーズンの粘り気は、21種類の食物中9位と評価され、グラノーラバーや クリームサンドクッキーと同程度と認識されたが、滞留量はこれらの食物より14%少なかった。

3.口腔内の病原菌の増殖

3つ目の虫歯の原因は、歯表面の細菌叢のバランスが崩れ、病原菌が増加することです。虫歯の原因となる口腔内の病原菌を減少させる方法として、緑茶やクローブなどの機能性食品を用いた研究が数多く行われています。一方、トンプソン・シードレス種のレーズンを用いた調査3の実験では、レーズンは、虫歯の原因菌の増殖を抑制するさまざまな物質(オレアノール酸、オレアノールアルデヒド、ヒドロキシメチルフルフラール)を含んでいることが分かりました。

方法 レーズンから既知の8種類の化合物を抽出し、口腔内病原菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)に対する抗菌活性を評価した。
結果 レーズンに含まれる化合物のうち、オレアノール酸、オレアノールアルデヒド、5-(ヒドロキシメチル)-2-フルフラール、β-シトステロールに口腔内病原菌の増殖を抑制する効果が認められた。